コムスン事件に見る介護業界の「明」と「暗」

illust293

高齢化が進む日本。その中で当たり前のように「介護」という言葉は使用されていますが、1980年代に「介助」と「看護」をあわせて作られた言葉です。

そう考えると介護の歴史は、わずか30年に過ぎません。

2000年(平成12年)4月にスタートした介護保険制度は国民に介護保険料の負担を求め、社会福祉の対象者・サービス提供・費用負担のあり方を見直し、介護福祉事業の一般化・普遍化がスタートしました。

それまでは民間企業が参入していることは少なく、またごく一部の企業にしか認められていませんでした。

ですから介護のサービスを提供していたのは主に社会福祉法人が中心でした。そのため市場原理が全く働かず、狭くて閉鎖的で非常に特殊な業界でした。

介護保険制度が始まり民間企業が参入してから介護業界は変わりしました。有料老人ホーム、グループホーム、デイサービス、訪問介護ステーションなどが、まるで雨後のタケノコのように誕生し、その数が全国で数千社に達したそうです。

しかしその反面、高齢者を死こさせる事故が発生したり、不正請求する業者が統出したりと、世間を騒がせる事件が発生しました。

介護業界最大手の事業者だったコムスンが、悪質な不正の発覚により廃業に追い込まれたのが象徴的な例です。

介護保険制度では、介護サービスを提供して介護報酬を得るためには都道府県から「指定」を受け、5年ごとに指定を更新しなくてはなりません。

ところが、コムスンは雇用していないホームヘルパーなどが実在しているように見せ介護事業所の指定を受けていました。

コムスンは悪質な不正が組織的、継続的に行われていたとして、2007年(平成19年)6月6日、「指定打ち切り処分」が下されました。利用者数と介護報酬額の確保などについて、現場責任者らに厳しいノルマを課していたようです。

ノルマの中には人件費を抑えるといった内容も見られ、ノルマ最優先、利益優先のやり方であったといわれています。

こういった環境にあって、最も苦しんだのは現場の社員たちです。コムスン事件は行き過ぎた効率化や利益追求が生んだ弊害といえるでしょう。